PN接合のバンド図 — ダイオードの中身

ダイオードが一方向にしか流れないのは、接合の所に 内蔵電位の壁 があるから。P型とN型をくっつけると、境界でキャリアが拡散して打ち消し合い、空乏層(動ける電荷が居ない帯)ができて、バンドが曲がる。この曲がり=電子が越えなきゃいけない壁だ。

バイアスを動かすと:順方向(P側を+)にすると壁が下がって空乏層が縮み、少数キャリアが接合の近くにドッと注入され、電流が指数関数的に流れ出す。逆方向だと壁が高くなり空乏層が広がって、ほぼ流れない。中段のキャリア分布(青=電子, 赤=正孔)で、その注入の山/凹みがいちばんよく見える。← /play に戻る

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※ この上の図はインタラクティブな模式表示です(下の「理論」の式は標準的なもの)。空乏層内のキャリア曲線(破線・淡色)は見やすさのための視覚補間で、空乏近似では可動キャリアはほぼ 0 として扱います。降伏電圧、逆回復の τ/di/dt は画面内で見せるための模式量で、実部品の値ではありません。電流は理想ショックレー式なので、高順方向・高温では直列抵抗・高注入・自己発熱を無視した外挿値になります。

空乏層の中で起きていること — 電荷 → 電界 → 電位

上のバンドが曲がる“理由”を3段で。①むき出しの固定電荷 ⊕(ドナー)⊖(アクセプタ)(動けるキャリアが抜けた残り)→ ②それを積分した電界(三角形)→ ③さらに積分した電位(S字、段差=Vbi−V)。バイアスを動かすと、逆方向では電荷の帯が広がり三角形が高くなる——これが W∝√(Vbi−V) の正体だよ。

理論:式で見るPN接合

内蔵電位(ビルトイン)
$$qV_{bi}=kT\,\ln\!\frac{N_a N_d}{n_i^{2}}$$
P型とN型のフェルミ準位を一直線に揃えるために、バンドが曲がる量。これが接合の“壁”。ドープ($N_a,N_d$)が濃いほど高い。$n_i$=真性キャリア濃度。0Vでもこの段差は残る——揃うのは $E_f$ のほうで、バンドはむしろ $qV_{bi}$ ぶん階段状に下がる。
空乏層幅
$$W=\sqrt{\frac{2\varepsilon}{q}\!\left(\frac{1}{N_a}+\frac{1}{N_d}\right)\!(V_{bi}-V)}\;\propto\;\sqrt{V_{bi}-V}$$
逆方向($V<0$)で $(V_{bi}-V)$ が増えて広がり、順方向($V>0$)で縮む。動けるキャリアが抜け、固定電荷だけ残った帯。次の囲みで「なぜ平方根か」を解く。
ダイオード式(ショックレー)
$$I=I_s\!\left(e^{qV/kT}-1\right)$$
順方向は $V$ が $kT/q\approx 26\,\mathrm{mV}$ 増えるごとに約 $e$ 倍(指数)。逆方向は $-I_s$ に飽和してほぼ流れない。
少数キャリア注入
$$n_p(0)=n_{p0}\,e^{qV/kT},\qquad n_{p0}=\frac{n_i^{2}}{N_a}$$
接合端の少数キャリア濃度が $e^{qV/kT}$ 倍に持ち上がる。中段のキャリア分布の“山”がこれ。
蓄積電荷・逆回復
$$Q\approx I_F\,\tau,\qquad \frac{dQ}{dt}=i-\frac{Q}{\tau}$$
順方向で溜めた少数キャリア電荷 $Q$ を掃き出すまで遮断できない。$Q\to0$ の瞬間に電流が $0$ へ snap するのが逆回復。寿命 $\tau$ が小さいほど速い。中段の紫の塗り=この $Q$

なぜ √ になるのか — 空乏近似とポアソン方程式

空乏層の中は動けるキャリアが居ないので、電荷はドーパントの固定電荷だけ。n側は $+qN_d$、p側は $-qN_a$ が、むき出しで並ぶ。

$$\frac{dE}{dx}=\frac{\rho}{\varepsilon}\quad\Rightarrow\quad E(x)\ \text{は三角形(接合でピーク }E_0\text{)}$$

電界はポアソン(ガウスの法則の1次元版)で、固定電荷を積分した三角形になる。むき出しの正電荷と負電荷は釣り合うので

$$N_a\,x_p=N_d\,x_n\qquad(\,x_p,x_n=\text{p側・n側の空乏幅}\,)$$

電位差は電界を積分した値=三角形の面積:

$$V_{bi}-V=\tfrac12\,E_0\,W$$

この3本を解くと $W\propto\sqrt{V_{bi}-V}$ が出る。直感:電圧を増やすと三角形を高くしなければならず、そのために底(幅 $W$)も広げる必要がある。高さと幅が一緒に伸びるので、電圧(=面積)に対して幅は平方根で効く、というわけ。

接合容量(バラクタ)— 電圧で変わるコンデンサ

逆バイアスの空乏層は、電荷の溜まらない隙間をはさんだ平行平板コンデンサそのもの。幅 $W$ が電圧で変わるので、容量も電圧で変わる:

$$C_j=\frac{\varepsilon A}{W}\;\propto\;(V_{bi}-V)^{-1/2}$$

電圧制御コンデンサ(バラクタ)。逆電圧を深くするほど容量が減る。VCO や受信機のチューニング、PLL の微調整に使われる。さっきの $W\propto\sqrt{V_{bi}-V}$ がそのまま効いている。

$I_s$ はどこから来る? — 少数キャリアの拡散

ショックレー式の $I_s$ の中身は、接合端に注入された少数キャリアが、中性領域を拡散しながら再結合していく流れ:

$$I=qA\!\left(\frac{D_p\,p_{n0}}{L_p}+\frac{D_n\,n_{p0}}{L_n}\right)\!\left(e^{qV/kT}-1\right)\equiv I_s\!\left(e^{qV/kT}-1\right)$$

$D$=拡散係数、$L=\sqrt{D\tau}$=拡散長、$p_{n0},n_{p0}$=平衡少数キャリア。$I_s\propto n_i^{2}$ なので、温度に強く依存する(次)。

もう一歩:降伏と温度

降伏(ブレークダウン):逆方向を強くかけると、ある電圧で電流が急に立ち上がる。電界で加速した電子が次々イオン化するなだれ降伏と、薄い接合でバンド間トンネルが起きるツェナー降伏。このトイの I–V には描いていないが、現実の逆方向の“上限”。

$$I_s\propto n_i^{2}\propto e^{-E_g/kT}$$

温度:$I_s$ は温度で急増する($n_i^2$ が指数で効く)。その結果、同じ順方向電流を流すのに必要な電圧は温度が上がるほど下がり、おおむね $-2\,\mathrm{mV/K}$。ダイオードが温度センサーに使えるのはこのため。