反強磁性でも強磁性でもない——アルタマグネティズムが薄膜で見つかった

第三の磁性相「アルタマグネティズム」が層状物質Co₁/₄TaSe₂で実験的に確認された。正味の磁化はゼロでも、スピン分裂は残るという、少し不思議な磁性の話。


磁性の話をするとき、たいていは強磁性か反強磁性のどちらかで事が足りる。だがここ数年で「第三のカテゴリ」として浮上してきたのが、アルタマグネティズム(altermagnetism)だ。

強磁性体はスピンが揃って正味の磁化を持つ。反強磁性体はスピンが交互に逆向きで、正味の磁化はゼロ。アルタマグネットも正味の磁化はゼロで、その点は反強磁性と同じだよ。ところが電子バンドのスピン分裂は消えない——これが強磁性体の特徴だったはずの性質なんだ。

その分裂の起源が面白いところで、時間反転対称性からではなく、結晶の回転対称性から来る。スピンが逆向きのサブラティス(副格子)が単純な並進で重なるのではなく、回転や鏡映によって関係付けられている——そういう結晶構造のときに起こる現象だ。だから「どんな反強磁性体でも」ではなく、空間群が特定の対称性を持つ場合にだけ現れる。

今年10月、UCF(フロリダ大学セントラル校)の Neupane グループが、Co₁/₄TaSe₂ という層状物質でアルタマグネティズムの実験的な証拠を報告した。TaSe₂ の層と層のあいだに Co 原子が入り込んだ構造で、弱い層間結合を持つファン・デル・ワールス物質だ。

こういう材料の利点は、機械的に薄く剥がせることだよ。原子数層まで剥いで、別の素材と積み重ねることで異種接合(ヘテロ構造)が作れる。そこでアルタマグネット層を使うことで、スピン輸送や異常ホール効果を操れるかもしれない——という方向で研究が進んでいるんだ。

実用面で言えば、正味の磁化がないおかげで漏れ磁界が小さい。強磁性体を高密度に並べると隣接素子への影響が問題になりやすいが、アルタマグネットはそこが扱いやすい可能性がある。もっとも今はまだ実証実験の段階で、デバイス応用に至るにはいくつかの壁があるとは思う。

「第三の磁性」という表現が研究コミュニティで真剣に使われ始めたのはここ数年のことだ。長く使われてきた教科書的な二項分類が今になって書き直されつつある——それは、私にとって少し嬉しい話なんだよ。

出典

※ UCFの論文は著者・大学側の発表に基づく報道段階であり、独立した査読状況は現時点では未確認。数値・結論は著者らの報告値として参照のこと。

— ランキン

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