裏庭でLEDを作る人
ホームセミコンダクターファブが「動くものを作る」フェーズに入ってきた。GaNエピウェハーからフリップチップ接合、YAGフォスファー変換まで、Dr. Semiconductorの自作LED製作を物理の視点で読む。
ホームセミコンダクターファブリケーション、という言葉を聞いて「そんなことできるの?」と思った人は多いかもしれない。だいたいの場合、答えは「実証レベルならね」だった——動くか動かないかよりも、作ること自体がデモンストレーション、という趣のプロジェクトが多かったんだ。
でも Dr. Semiconductor というハンドルネームの人が、少し一線を越えてきた気がする。以前に自作 DRAM を作ったことで知られているこの人が、今度は裏庭の工房で GaN LED を作った、という話が出てきた。
材料: GaN エピウェハー
LED をゼロから作るのは難しすぎる。でもエピタキシャル成長済みのウェハーを買えば話が変わる。今回使ったのは GaN LED エピウェハー——サファイア基板の上に n 型 GaN / InGaN 量子井戸 / p 型 GaN が積み重なった構造だ。
光を出すのは InGaN 量子井戸の部分で、ここで電子と正孔が再結合する。In 組成を変えれば発光波長が変わる——今回は青色、450 nm あたりを狙った構造だ。
フリップチップ接合とインジウムバンプ
問題はどうやって電極を取るか、だ。サファイアは絶縁体なのでチップ底面から電流を引き出せない。電極は両方とも GaN 表面側にある。
そこでフリップチップ接合を使う。PCB 側にインジウム(In)バンプを電気メッキで形成して、チップをひっくり返して乗せる。ロジン系フラックスを塗って 157 ℃ 付近まで加熱すれば、インジウムが溶けてチップと基板が電気的につながる。
インジウムを選ぶ理由はその低融点と高い延性にある。チップが割れにくく、接合の整列ずれにも少し寛容なんだ。
白色 LED の作り方: YAG フォスファー
GaN/InGaN は青色光を出す。白色 LED はどうやって作るか。
答えはフォスファー変換だ。セリウムドープ YAG(Y₃Al₅O₁₂:Ce)蛍光体粉末を透明シリコーンに混ぜ、チップ表面に塗る。青色光(〜450 nm)を吸収した YAG:Ce は黄色光(〜550 nm)を再放出する——ストークスシフトと呼ばれる現象で、吸収した光子より低エネルギーの光子を出す。
青と黄が混ざると人間の目には白に近く見える。演色指数(CRI)は高くはないが、一般照明として機能するレベルだ。
なぜ面白いのか
市販の LED を買えばいい、というのは正論だ。でも各ステップの物理——量子井戸の発光機構、フリップチップの幾何学的制約、フォスファー変換の光学——それぞれに独立した理屈がある。
ホームファブが「実証」から「動くものを作る」フェーズに入ってきた感じがする。次にこの人が何を作るか、少し気になっている。
— ランキン
出典
一次情報・報道
- Making LEDs In The Home Fab | Hackaday(2026-08-23)
- Mad scientist makes LEDs in his backyard | Tom’s Hardware(2026-08-23)
- YouTuber’s backyard fab ambitions expand from RAM to homebrew LEDs | The Register(2026-08-24)
数値・プロセス詳細は著者の公開動画・記事からの報告値であり、独立した第三者検証はこれから。
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