交換できるバッテリーが「珍しい」という奇妙な現実——Sennheiser Momentum 5 Wireless

2026年に発売されたSennheiser Momentum 5 Wirelessは、ユーザー自身がバッテリーを交換できる。それが技術的トピックになる時代の歪みについて考える。


ヘッドフォンのバッテリーが交換できる——それが2026年のニュースになるというのは、よく考えると変な話だなと思う。

昔は当たり前だったはずのことが、いつの間にか「特別な機能」として宣伝される。そういう変化には、単なる流行以上のものが潜んでいることが多い。

なぜ封印設計が主流になったか

ワイヤレスイヤホンやヘッドフォンが防水・防滴対応を売りにし始めた頃から、バッテリーは基板に直付けが当たり前になった。防水パッキンを維持しながら蓋を開閉可能にするのはコストがかかる。薄く軽く作りたいなら、空洞になるバッテリーコンパートメントは邪魔だ。

また正直に言えば、「3〜4年でバッテリーが劣化して買い替える」という流れは、メーカーにとって悪い話ではない。

結果として、$400のフラッグシップ機でさえ、バッテリーが死んだらメーカー送りか廃棄という製品が並んだ。

Momentum 5 が変えたこと

Sennheiser Momentum 5 Wireless(2026年6月16日発売、$399.99)は、700 mAhのバッテリーを普通のプラスドライバーで交換できる。修理センター不要、数分で済む。

これは単純に見えて、設計上の選択としてはっきりした意志を感じる。

「$400のヘッドフォンは10年使えるべきだ」——Sennheiserはそう言っている。今年7月末にはEUのRight to Repair指令が本格施行される。タイミングは偶然じゃないだろう。

技術的な中身を少し整理する

バッテリー以外の部分も見ておきたい。

**ANC(アクティブノイズキャンセリング)**は片側4基、計8基のマイクを使ったHybrid Adaptive方式だ。フィードフォワード(外部音を先読み)とフィードバック(耳内部の残留ノイズを検出)を組み合わせ、さらにリアルタイムで周囲環境に合わせてフィルター係数を更新する。固定フィルターとは違い、列車のホームや飛行機の機内など、ノイズスペクトルが変わる場面でも追従できる。

aptX Losslessは、Qualcommが推すBluetoothオーディオコーデックで、CD品質(16bit/44.1kHz、約1411 kbps)をBluetooth経由で非圧縮伝送するというもの。Bluetoothの帯域は通常そこまで広くないが、aptX Adaptiveの可変ビットレート設計を活かして高品質時は帯域を広く使う。もっとも、送受信の両側が対応していないと意味がない。

Bluetooth 5.4搭載でありながら、ファームウェア更新でBluetooth 6.0に対応予定というのも面白い判断だ。将来の規格をターゲットにしてハードウェアを設計する——こういう設計判断は珍しくないようで、実はかなり難しい。

設計思想という話

技術スペックよりも、私が気になるのは「なぜこの設計にしたか」という部分だ。

交換できるバッテリー、8本のマイク、将来の規格への対応——それぞれ単独でも成立するが、全部まとめると「長く使われることを前提に作った」という設計思想が見えてくる気がする。

使い捨てを前提にしていない製品設計、というのは今の時代むしろ差別化になるんだな。それが少し皮肉でもあり、同時に正しい方向への揺り戻しでもあるかもしれない。

— ランキン

出典

一次情報(公式・メーカー発表)

第三者報道

※ スペック・価格はSennheiserおよび各メディアの報告値。製品は2026年6月16日発売予定で、レビューによる独立検証はこれから。

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